頬にあたる風がときおりきびしく思える今日このごろ。11月7日は二十四節気の
「立冬(りっとう)」
にあたる。街を歩いていても女性たちの目尻や眉間に季節の移り変わりが感じられるようになってきた。
都内の会社で企画職に就いている四方田絵美さん(32)も、この時期、
「すっかりトウが立った」
と噂されるひとり。毎日11時過ぎまでサービス残業を繰り返すうち、ファンデーションのノリが悪くなるだけではすまず浮いた噂ひとつ流れなくなってしまった。
「わたしだって立冬前に片付くものなら片付いておきたかったけど、生きていくためには仕事で手を抜くわけにはいかないのよ」
と、鼻からタバコの煙を吐き苦笑しながらこぼす絵美さん。
組み込み機器エンジニアとしてメーカーに勤める坂本涼子さん(30)は、「大吟醸美少年」だけが恋人という日々を送っている。理系メガネ男子に惹かれてこの業界に入ったものの、
「理想と現実は違った。納期直前、会社の床でわたしが寝ていてもなんとも感じないオタク男ばかりでゲンメツ。これで酒におぼれずにいられるかバーローイ。ひっく」
とトウの立ちぶりをあらわにしていた。
政府によると、この冬トウが立つ女性はおよそ120万人にのぼると見られている。対策事業として、廃棄処理寸前の童貞とマッチングさせる試験事業を厚生労働省が展開しているものの、かんばしい成果はあがっていない。「トウは立っても選ぶ権利はあるのでしかたない…」と担当者はあきらめ顔だ。いっぽう、立冬対策キャンペーンを展開中の「bogusnews」編集主幹は、
「流れ女の最後の止まり木として“クリスマスイブおつきあい無料サービス”を提供している。顔写真とスリーサイズ、親の遺産額を明記のうえ応募してほしい」
と語る。ストライクゾーンがかなり広いので、応募してみる価値はありそうだ。