東日本大震災に伴う福島第一原発の事故で、近隣農漁業従事者への悪質な風評被害が問題となっているが、こんどは新たに
「福島産の電力は放射能に汚染されている」
というデマの流れていることがわかった。このデマは消費者のあいだで激しい買い控えを引き起こしており、生産者のくらしにも影響を与えかねない状況だ。
福島県で戦後長らく電力生産に携わってきた東京電力さん(60)の一家も、風評被害に苦しんでいる。震災前には東日本一円に電力を出荷し暮らしてきたが、3月の震災以来「取引を自粛したい」などと申し出てくる需要家が相次いだ。理由を聞いてみると
「おたくの電気は原子力に汚染されていると聞いた」
などという根拠のないデマだった。
こうした買い控え傾向は3月以降、都心を中心に拡大傾向にあり、ピーク時には生産量の3割が購入されずドブに捨てられたという。電力は生鮮食品で保存がきかないため「廃棄するしかない」と東京さんは途方に暮れる。
電力に関する風評は他にも
「福島の電力は政官学財一体でカネにも汚染されている」
という悪意に満ちたものもあり、警視庁では「名誉毀損にあたる可能性が高い」と見て慎重に捜査を進めている。