普及の進む電子書籍の世界では、紙媒体をスキャンできるレンタルスペースという新ビジネスまで登場し話題を呼んでいるが、元祖である紙の業界も負けていない。東京・飯田橋に、返本されてきた自筆書籍の裁断を楽しめる
「返本の森」
という店がオープンした。
本の取次業者が集中する飯田橋五軒町界隈の各社が協力しあって立ち上げたもの。店舗はネットカフェのような時間貸しのスペースとなっており、大量のプロユース裁断機が用意されている。売れなかった本を著者がここに持ち込めば、手軽に裁断処理できる。裁断冊数が数千部から数万部まで対応できるよう、寝泊まり作業用の仮眠室やドリンクベンダーも完備されている。
従来、紙媒体の返本についてはまとめて処理業者に送られ裁断されていたため、本を処分する痛みがわからず
- 著者が売れもしない企画で過剰な刷り部数や印税を要求する
- 出版社が無責任に異常な数の配本を指定する
原因になっていた。返本の森の開店には、こういった状況を解消しようという狙いがあるようだ。
また、業界人のあいだでは
「これをきっかけに、そもそも本を刷るという行為が、書店の棚をいかに占有して広告展開するかという行為でしかなく、紙資源のムダづかいに過ぎないことに気づいてもらえれば」
と期待する向きもあるようだ。