単細胞生物の一種である粘菌が、いわゆる「乗り鉄」としてすぐれた能力をもっていることが北海道大学の研究でわかった。粘菌を首都圏近郊区間を模した培地で育てたところ、最短区間料金で実スケールにして700キロにもおよぶ「大回り乗車」ルートを示すかたちに育ったというのだ。
研究をおこなったのは同大学の乗老篤史教授らのグループ。あらかじめシャーレ上の培地に首都圏の「大都市近郊区間特例」適用地域各駅とおなじかたちでエサを配置し、秋葉原駅地点に粘菌を置いたところ、秋葉原から錦糸町経由で東京─千葉─佐倉─小山…八王子を経てさらに茅ヶ崎─横浜─西浦和─水道橋─神田と、130円きっぷでたっぷり700キロ以上も列車に乗れる「大回り乗車」ルートを描いて成長したという。
研究チームでは、この現象について
「粘菌が“乗り鉄”として高い能力を秘めていることの現れ」
と見ており、人間よりはるか昔に生まれた粘菌が乗り鉄であることに「鉄オタは地球上の生物すべてに組み込まれた本能なのかもしれない」と恐るべき可能性も指摘している。
研究報告は22日付けの米科学雑誌「サイエンス」に掲載される。同誌には特別付録として鉄道弘済会発行「時刻表」のほかJR旅客営業規則をまとめた冊子がついてくる。