ネットのみならず、今後の著作権ビジネスのあり方を再考させるなど社会に大きな影響を与える存在になった「Winnie」。本書はそのWinnie問題を引き起こした渦中の人物が、みずからWinnieの技術的背景、そして思想について語った注目の書である。
今日では「Winnieなんてただマフマフしてるだけ」「なんか声がキモい」と低く評価する人々もいる。しかしWinnieの真価は、第一次世界大戦期の誕生以来、原作者からディズニーへと権利が移転する激動を乗り越え、黄色い裸一貫で現在のキャラクター価値を築き上げてきたところにある。「キッコロとモリゾー」のように官主導のキャラクタービジネスがはびこる日本とは、精神的対極に位置すると言っても極論ではない。Winnie the Poohはベンチャー魂の具現者だったわけだ。
本書では、Winnie the Poohがいかなる技術を駆使して今の王座に就いたかが、多くのページ数を割いてあますところなく書きつづられている。小太りの「キャラ」を崩さないために日頃から甘いものを大量に食べ続けるPooh。本来生物としては不自然な「黄色」を維持するために、毎日みかんを摂取してわざわざ黄疸になるPooh。医師から糖尿病の宣告を受けながらも、こどもたちのイメージを守るためにハチミツをなめ続けるPooh。まさに苦難の連続である。
著者のPooh氏は「単に着ぐるみを着ればプーになれると思っている今の女子中高生は、考えが甘すぎる」と警告する。「着ぐるみを着るだけでなれるのはせいぜいプー太郎。真のWinnie the Poohを目指すなら徹底したキャラの作り込みが必要だ」との氏のセリフは、あまたの苦労を乗り越えてきた人物ならではの重みがある。人生訓としても、ぜひ机に常備しておきたい一冊だ。
- 2005
- 10/23 20:43