年の瀬も押し迫った31日。大掃除を終えた各家庭では、先端を鋭利に尖らせた大きな青竹を玄関に設置しはじめる。日本で新年を迎える際の伝統的なしきたりである
「モテ男串刺し青竹」
だ。とりわけ嫁入り前の娘がいる家庭では「これがなければ年を越せない」とまで言われている。
都内・文京区に居をかまえる鈴木敏彦さん(48)も、この日みごとな3本組の青竹を玄関に据え付けた。直径20センチ、長さ1メートル半の孟宗竹製。23歳の娘さんがいる鈴木さんにとっては、串刺し青竹は欠くべからざる存在だ。
「ウチの娘に手を出そうというモテ男は、これで串刺しですよ」
と自信を伺わせる。
モテ男串刺し青竹の由来は記紀の時代にまでさかのぼる。一夜の宿を貸した旅人に愛娘の貞操を奪われた素戔嗚尊(スサノオノミコト)が怒り狂い、男を青竹で肛門から串刺しにしたという故事がそもそものおこりだ。以来、処女の娘をもつ家のあるじは新年に青竹の飾りを供え、
「不埒な男が近づけばこれで刺し殺すぞ」
と意思表示するようになった。本数が多いほど、竹が太いほど親のわが子への愛情が深いとされている。鈴木さんの愛の深さも推して知るべしといったところか。
また、三が日のあいだは
「街で女性を連れ歩いているモテモテ男を見つけたら、ひっつかまえて手近な青竹に串刺しにしてよい」
というならわしがある。近年はこうした日本の美しい伝統を知らない若い人々が増えているようだが、読者諸兄はぜひ串刺し青竹でモテ男根絶に協力していただきたいものだ。また、命の惜しい彼女持ち男性はくれぐれも女性と初詣に繰り出すことなどなく、家にひとりで引きこもって静かにしていることをおすすめしたい。