2月のバレンタインデーという需要期を前に、生産量の落ち込みやヘッジファンドの介入でチョコレート原料であるカカオ豆の高騰が続いている。デフレ圧力で値上げにも踏み切れない製菓業界では、カカオ豆に代わる新たな材料を使用した代用チョコへの切り替えをすすめている。その材料とは、同じ豆類でも価格面で大幅に有利な「納豆」だ。
都内新宿区にある製菓メーカー・ロッテのチョコレート工場。ここでは年明けからすべてのチョコ生産ラインを納豆原料のものに切り替えた。茨城県から輸入されてきた納豆を、作業員が鼻をつまみながら大釜で煮出す。その後こし出すと茶色い液体の代用チョコエキスができる。砂糖をまぜて固めればチョコレートの完成だ。
納豆と言えば茨城県の特産品だが、牛馬か茨城県人のエサにしかならないという下賎な食材と見なされ、県外では二束三文で手に入る。原産国での不作などから高騰のつづくカカオ豆に比べると「従来原価の2~3パーセントにまでコストダウンできる」(メーカー担当者)という。犬もまたいで通るという納豆ならではのコストパフォーマンスだ。
茨城県側も思わぬ納豆特需に沸いている。現金収入の手だてのない同県には、次々訪れる製菓メーカーはまさに救世主。しかし、同県の食糧事情に詳しい専門家は
「納豆は貧しい茨城県人の主食。輸出が増大すれば庶民の食卓から納豆が消え、餓死者も出る可能性がある」
と警告する。バレンタインイベントの盛り上がりによっては、茨城県人絶滅といううれしい副作用もありそうだ。