12月も20日となれば、子どもたちがクリスマスプレゼントの到着を今か今かと待ちわびて気もそぞろになっている時期だ。毎年24日には全世界のよい子や女性にプレゼントが間違いなく配送される。まさに世界最大の運送ビジネスイベントだ。しかし、そんなビジネスの裏でも、搾取され過酷な労働に苦しむ人がいる。しかも、それが老人とくればなおさら見過ごせない不正義だ。
プレゼント発送準備もたけなわの12月中旬。記者は北欧のとある寒村に飛んだ。ここにクリスマスプレゼント発送事業を独占的に手がける多国籍企業のロジスティクスセンターがあると聞いたからだ。氷に閉ざされ、地平線まで動くものはペンギンだけという厳寒の地。さっそくセンターに入ってみると中では40億以上ものプレゼントが出荷を待っていた。しかし、大量の荷物を懸命にさばいているのは、驚くべきことにたった一人の老人だった。
老人は派遣社員のクラウスさん。
「以前は“おとうさん”や“足長おじさん”“シャチョーサン”といったたくさんの同僚がいたんですけどねえ」
昨今の世界的不況の余波で厳しい人員削減が実施。先ごろ最後の同僚が鼻炎で鼻の赤いのを「酒に酔って仕事している」と首を切られ、ついにクラウスさんだけで切り盛りするようになった。以来激務が続いたせいで、クラウスさんはヒゲまで真っ白になってしまった。
クラウスさんは疲れきった表情で訴える。
「かつてアメリカに“何をもらえるかではなく、何をあげられるかを問え”と諭した政治家がいたそうですが、私もおなじ気持ちです」
最終出荷のクリスマスイブには完徹間違いなしというクラウスさんを救うためには、今からでもプレゼントやディナーやホテルデートをキャンセルするしかない。記者はクラウスさんに「民衆にこの惨状を広く知らせる」と“クリスマスまでにカワイイ彼女をもらう”こととバーターで堅い約束を交わし、ツンドラの地を後にした。