いよいよ12月も下旬が近づき、街のそこかしこで楽しげにクリスマスの計画を語る若者や家族連れがめだつようになった。中でも、子どもたちや女性は「クリスマスにはどんなケーキを食べるか」でワクワクしている向きも多いようだ。しかし、そのクリスマスケーキの陰に、過酷な労働を強いられている開発途上国の女性たちの存在があることはご存じだろうか。
クリスマスケーキの生産も佳境の12月初旬。記者はアフリカ・ガーナ南部のとある町に潜入した。ここではケーキには欠かせない原料である生クリームをつくる日系メーカー工場がある。工場の主な働き手は20代の女性たち。女性の権利もまだ確立されているとは言えないこの地で、
「女性たちが搾取されている」
と聞いた。たしかに、夜に仕事を終え帰路へつく女性たちを観察していると、異常なほど憔悴しきっている。いったい工場の中では何が起きているのか。記者はこっそりと潜りこんだ。
中では思わず目をそむけたくなるような景色が展開されていた。クリーム生産ラインに沿って立たされた女性たちが、胸をはだけて搾乳器を押し当て、一心不乱に母乳を搾り取っている。貯まった乳は巨大なタンクへと集められ撹拌され、やがてクリスマスケーキ用の生クリームとなる。なんと、ここは女性の母乳を絞ってクリームをつくる工場だったのだ。
ガーナでは、ふつうに牛乳から生クリームをつくるよりも時間給換算で女性から搾乳するほうがおよそ10分の1と安い。デフレによる日本メーカーからの値下げ圧力もあり、いつの間にか母乳でクリームをつくるのが当たり前になっていたという。事情通は
「もともとクリスマスケーキは、聖夜を祝う金持ちの貴族が女体盛りを楽しんだのが発祥との伝承もある。本格的だ」
と語る。しかし、記者のまぶたからは帰国後も苦しみながら搾乳される女性たちのつらそうな顔が消えない。彼らを救うには、やはりケーキ、いや根本的な解決のためにクリスマスを廃止すべきではないのか。賢明な女性読者のみなさんには、ぜひ「途上国の女性を救うためにイブに彼氏の家でお泊まりがてらケーキを食べたりはしない」ことにご賛同いただきたい。