いよいよ12月も中旬となり、街のそこかしこでクリスマスソングが聞かれるようになった。そしてよく見かけるのが“赤い服”を着て店頭に立つサンタクロース姿のアルバイトの若者。屈託ない笑顔で来客に呼びかけている彼らは、おそらくその赤い服の陰で過酷な児童虐待が繰り広げられていることを知らないだろう…。
サンタ服作りも佳境の11月初旬。記者はバングラデシュ東部のとある町に潜入した。ここには日系衣料メーカーに委託されサンタ服を生産している工場がある。工場の主な働き手は10代前後の子どもたち。教育施設も満足に行き届いていないこの地では、珍しいことではない。異常なのは、仕事を終え帰路につく子どもたちが、みな包帯や絆創膏だらけになっていることだ。いったい中では何が起きているのか。記者はこっそりと潜りこんだ。
中では思わず目をそむけたくなるような景色が展開されていた。中央に置かれた巨大な鍋。そこに子どもたちがみずからのからだをナイフで傷つけては流れる血を貯めていく。さぼっている子どもには容赦なくムチがふるわれる。やがて貯まった血に、別の工場から運び込まれてきた純白のケープが放り込まれる。しばらくすると引き上げられ、中から真っ赤に染まったサンタ服が現れた。なんと、ここは子どもたちの血でサンタ服を染める工場だったのだ。
バングラデシュでは、赤い染料よりも時間給換算で子どもたちから採取できる血液のほうがおよそ10分の1と安い。デフレによる日本メーカーからの値下げ圧力もあり、いつの間にか子どもの血で染めるのが当たり前になっていたという。事情通は
「もともとサタンクロースの赤い服は、子殺しで浴びた返り血によるとの伝承もある。本格的だ」
と語る。しかし、記者のまぶたからは帰国後も苦しみながら血を流す子どもたちのつらそうな顔が消えない。彼らを救うには、やはりサンタ服、いや根本的な解決のためにクリスマスを廃止すべきではないのか。賢明な女性読者のみなさんには、ぜひ「子どもたちを救うためにクリスマスデートはしない」ことにご賛同いただきたい。