不況にあえぐ出版業界をひとり牽引する人気シリーズ「ハリー・ポッター」。来年5月には新作の日本語訳発行が予定されているが、事前発注の伸びが鈍い。書店では「ハリポタの神通力もいよいよ薄れてきたか」とささやく声もあるという。
2006年5月17日の発売を予定している第6巻は、「ハリー・ポッターとニューハーフのプリンス」(原題:Harry Potter and the New-Half Prince)。版元の静山社によれば翻訳作業は「快調」。しかし、書店からの引き合いは既刊の成績に比べると「芳しくない」(書籍取次大手幹部)という。ハリー・ポッターシリーズが書店返本の効かない“完全買い切り制”を採っていることも一因だが、事情通が問題を指摘するのは新作の“内容”だ。
前作で失恋した主人公のハリーは、傷心を癒すため日本にやってくる。過去を忘れようとアルコールにおぼれるハリー。新宿二丁目に入り浸るうち、彼はひとりの美しい男性と知り合う…というのが新作の導入部。著者のJ.K.ローリングは「少年期を終えたハリーが新たな禁断の愛の扉を開く、シリーズの中でも重要な一冊となる」と語っている。だが、ハリー・ポッターをあくまで「少年少女向け」ととらえる日本の書店業界には、残念ながら敬遠する向きが強いようだ。
いっぽうで一部の特殊書店系列は、6巻に大量の事前発注をかける動きを見せている。池袋・乙女ロードで営業する「ケイ・ブックス池袋」では「客注も含めて5,000冊の予約を出している」との担当者談。「5月には二次創作本もあわせて大々的に棚を展開していきたい」と鼻息が荒い。客層は変われどハリーの魔力はまだまだ健在のようだ。
- 2005
- 12/20 16:47