「わたしも昔はニートだった」…愛知万博を成功に導き一躍セレブの仲間入りをしたキッコロさん。開口一番発せられたのは、予想もしなかったことばだった。名古屋駅近くホテルの一室。たばこの煙をくゆらせながら、遠くを見るような目つきでインタビュアーに過去を語ってくれた。
愛知県内の私立大学を卒業したキッコロさん。バブル崩壊の折りも折り。買い手市場のあおりをくらって就職活動にはすべて失敗し、長久手の実家に引きこもった。しばらくはコンビニのアルバイトをしながら正社員の口を探していたものの、なしのつぶて。一時期は自暴自棄になり、匿名掲示板を荒らしてまわるなど人間として最低の行為に走ったこともあるという。
そんなキッコロさんにチャンスが訪れたのが5年前。名駅地下街をぶらぶらしていたところを、スカウトマンに呼び止められた。「“キミには光るものがある”と言われた。とても信じられなかったがどうせやることもないしと話にのった」という。万博のイメージタレントへの就任は、まったくの偶然だった。
「“いまさら万博かよ”“自然破壊に協力するのか”とそしられ、なじられながらも表ではにこやかにふるまった。苦しかった。家でワラ人形に釘を打ち付けて呪ったこともある。そんなときもニート時代のつらさを思い出すと不思議に乗り越えることができた」とタバコの灰を落とすキッコロさんの笑みには、苦難をくぐり抜け成功した人物らしいオーラが見えるようだ。
「いまニートとしてつらい思いをしている人には、チャンスが訪れる日を信じ続けることが大事だと言いたい。“自分は第二のキッコロになる”とがんばる人の目標であり続けたい」と語る。秋からはバラエティ番組の司会役が決まっているキッコロさん。彼の両肩には全国一千万ニートの夢がかかっている。[インタビュー/写真: 本田義三(ライター)]
- 2005
- 09/28 21:11
<ひと>タレント キッコロさん 芸能
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