底辺校経営再建のため東大合格を目指す高校生と教師たちの姿─を描いてブレイクした「ドラゴン桜」の続編。今回は、夏の参議院選で圧勝間違いなしの安倍政権が再生したあとの教育界が舞台。実際の受験事情に即したストーリーに人気のあった前作同様、ポスト参院選のディストピアですぐ役立つリアルな処世術をつぎつぎ紹介する。
あらすじ。みごと東大に合格した矢島勇介と水野直美。しかし安倍政権による教育関連法の改正で、大学入学者には半年間の農業従事(徴農)が義務づけられていた。この試練を乗り越えてこそお国のために尽くすエリートとなれる…。ふたりは靖国神社の桜の木に誓いをたて、それぞれ強制労働キャンプへと送り出されていった。
勇介が送り込まれたのは北海道の北星学園余市キャンプ。そこはアメリカ人のニューハーフである義家弘介が統括する、恐怖の猛スパルタ施設であった。昼は大麻の栽培、夜は教育勅語に基づく徳育。
「大麻はわが大日本帝国の基幹農作物! うまくつくれないやつは出席停止だぁ!」
反抗的な生徒の頭に火を点けては叫ぶ義家の声が、大麻で朦朧とした勇介の脳裏に響き渡る…。
いっぽう直美が入所した東京・お茶の水女性キャンプでは、米国が反日国家としての本性を現した際のエネルギー不足に備え松根油の採取をするかたわら、ゆる体操で生理を自在にコントロールする訓練が行われていた。ナプキンを使わず、一滴でも下着を経血で汚せば厳しいしごきが待っている…。そんな日々になんとか耐えていた直美は、キャンプ長・藤原正彦の夜伽の相手をさせられたある晩、寝物語に恐ろしい事実を聞かされる。
「品格ある国家に多くの大学生は不要。この徴農制度の目的は、ひ弱な学生をふるい落として殺し、いつでも国家に命を捧げられる
“一万人精鋭エリート部隊”
を選び出すことにあるのだ!」
驚いた直美はバーコードハゲをくびり殺して脱走。地下に潜って体制転覆の好機を伺うが…。
ページをめくるたび手に汗握る描写が続き、読者を飽きさせない。また、作中で「すいとん」「だいこんめし」など日本的伝統食が多く紹介され、グルメマンガとしても楽しめる。読んでいて徴農制度実現後の日本の食卓が待ち遠しくなった。