二匹の小国民の子らが、どす黒いナントカ還元水の底で話していました。
「クラムボンはだまっていたよ」
「クラムボンはむっつりだまっていたよ」
「クラムボンは法の規定どおりだまっていたよ」
「クラムボンはむっつりだまっていたよ」
右のほうや西のほうは先行きが暗く死の世界のように見えます。そのはてのない天井を、つぶつぶ血税が流れていきます。
「クラムボンはだまっていたよ」
「クラムボンはむっつりだまっていたよ」
「それならなぜ、クラムボンはだまっていたの?」
「国対の指…知らない」
つぶつぶ血税が流れていきます。小国民の子らもぽつぽつと消費税を吐き出しました。それはゆれながらミサイル防衛費のほうへと消えていきました。
「クラムボンは死んだよ」
「クラムボンは殺されたんだよ」
「クラムボンは自殺したんだよ…」
「殺されたよ」
「それならなぜ殺された?」
「選挙の都…わからない」
そのときです。にわかに天井に白い泡が立って、下ぶくれした独裁者のようなものがいきなり飛び込んできました。そして、あたりを行ったり来たりしていた非国民の姿がひるがえり、いっしょに上のほうへと消えていきました。
二匹はまるで声も出ずうずくまってしまいました。
やがてお父さんが出てきました。
「どうしたい。ぶるぶるふるえているじゃないか」
「お父さん、いまおかしなものが来たよ」
「どんなもんだ」
「下ぶくれでね、キモいんだ。それが来たら、よけいなことを知ってる非国民が上へ連れていかれたよ」
「そいつの裏にアメリカ人が見えたかい?」
「わからない」
「ふうん。そいつは政治家だよ。そうりというんだ。大丈夫だ。給食費を払っていれば手出しはしないんだから」
「お父さん、非国民はどこへ行ったの?」
「非国民かい? 非国民はこわいところへ行った」
「こわいよ、お父さん」
「いい、いい。心配するな。
そら、日の丸の旗が流れてきた。ごらん、きれいだろう」
川上からたくさんの死体と一緒に血に染まった日の丸が流れてきました。