「はい、では1,000円から入ります。
1,000円ないか1,000円ないか、1,200円…」
景気のいいセリの声が響く。ここは東京・永田町のサクラ市場。全国から活きのいいサクラが集まる、国内最大規模の取引市場だ。出荷の最盛期を控え、近年でもまれにみる活況を呈している。
サクラとハラキリと言えば日本の伝統文化だったのも今は昔。最近では終身雇用制の崩壊や地域コミュニティの希薄化などで、いまひとつ良質なサクラが得られなくなりつつある。サクラの大口消費者である政府・与党も、宗教右翼や産経新聞だけでは動員数が足らず、こうした市場での調達に力を入れざるを得ない状態だ。
「市場で買ったサクラは情報を漏らす危険性があるのですが、美しい日本をつくるためですからね。背に腹は代えられません」
と、苦笑いしながらサクラを見繕っているのは安倍晋三さん(52)。今は、近々行われる教育基本法改悪を前に、もっとも多くのサクラが必要となる時期だという。
「目が死んでいて自分の頭で考えられなさそうなのが、いいサクラなんです。なんでも親のせい、日教組のせい、教育のせいにしてくれますからね」
と話しながら、
「5,000円!」
と大きな声をあげ、手ごろなサクラをすかさずゲットしていた。買い取ったサクラは各地のタウンミーティングに送られ活躍することになる。
水産庁では、サクラの代わりの世論操作資源として「ネット右翼」の養殖計画を推進中だ。しかし、ネット右翼の多くは引きこもりでコミュニケーション能力不足のため、天然のサクラの代用にはならないとの指摘もある。当面は永田町のサクラ市場がその役目を終えることはなさそうだ。