総務大臣の私的諮問機関である「電波監理審議会」は13日、電線を使った輸送・通信のしくみである
「電力線運送通信」(PLC)
について、一定の技術基準を設けながらも解禁することを総務省に求める答申を提出した。いっぽう、各方面からは「本当に安全なのか」といった疑問や反対の声があがっている。
電力線通信は、全国に張り巡らされた電線を使ってさまざまな荷物や手紙をはこぶ技術。日本では、明治期に「ふろしき包みを電線にゆわえつけ、遠くに届けてもらう」際に庶民が活用していたが、その後の郵便の発達で利用されなくなって久しい。解禁は郵政民営化に伴い通信の多様化を促進するために検討されてきたもの。技術の発達でふろしきが大容量化したことも、業界に電力線通信採用を後押しする原動力となっている。
しかし、審議会がなし崩し的に解禁を決めたことには批判が根強い。特に安全面から危険性を指摘するのがハムの愛好家たちだ。
「ふろしきから内容物がこぼれる“漏洩”の問題が解消されていない。お中元・お歳暮のシーズンには、電線を進むふろしきからハムが転落して通行人に激突する可能性がある」
と、ハムの人の別所哲也氏は語る。
また、行政でも厚労省は「ペストやコレラなど電線病を流行させるおそれがある」と危機感を募らせる。電力線通信への参入に乗り気なトナミ運輸ら事業者側は
「よく消毒しておくからだいじょうぶだ」
と反論するものの、実効性に不透明さが残る。このほかにもスカラー波対策など課題は山積み。電力線通信実現までの道のりはまだまだ険しそうだ。