ITベンチャーのグリー(本社:東京)は1日、異例のスピードで東証一部への上場を果たした。社長のぐり氏が裸一貫から育てあげた同社のサクセスストーリーは、インターネットビジネスに携わる者にとって新たな伝説となったと言える。いっぽう、ぐり社長の双子の弟は、対照的に事業に失敗。現在失意の日々を過ごしているという─。兄弟の数奇な運命を追った。
東京・目黒の瀟洒な住宅街に、今は見るも無残な姿となった空きテナントがある。珍しいカステラ専門店として、一時はメディアにも取り上げられた「カステール・ド・グラ」の跡地だ。同店は、
「あの有名絵本のカステラを食べられる」
としてぐりとぐら兄弟のぐら氏が開いたもの。派手なプロモーションで洋菓子激戦区に殴り込みをかけ注目を集めた。
しかし、ぐら氏の目論見は出だしから大きくつまづいた。兄のぐり氏が「ビジネスモデルが甘すぎる。これからはインターネットの時代」と袂をわかち、グリー社を立ち上げたのだ。おかげで「ぐりとぐら」という看板を使えなくなったカステール社は業績が伸び悩み、昨年の小麦粉価格急騰時についに倒産へと追い込まれた。一説には「厨房にねずみが出入りしている」と不衛生さが噂されていたせいだとも言われている。
今回、弊紙が独自にコンタクトに成功したぐら氏は、やつれきった姿ながらも成功した兄ぐり氏に「ぐりならやると思っていた」と赤い帽子を目深に被って目元を隠しながらエールを送っていた。ビジネスを舞台に対照的な人生を歩むこととなったぐりとぐらのふたり。ふたたびなかよく手をつないで森を散歩できる日の来ることを祈りたい。