右クリックのできない欠陥パソコンでマニアの人気を集めているPCメーカーの米Apple社は29日、新製品を投入し家具事業に進出することを明らかにした。PC業界では、OS最大手のMicrosoft社もテーブル製品を発表してファニチャー市場に参入したばかり。今後は家具業界を舞台に、二大巨頭のたたかいが繰り広げられることになりそうだ。
この日開かれたカンファレンスで壇上に現れたApple社CEOのスティーブ・ジョブス氏は、「きょうお見せするプロダクトはこれまでにないエクスペリエンスを与えてくれる画期的なイスだ」とアピール。新製品の
「iChair」
を紹介すると、そのすばらしさに人々は息を呑んだ。機能性を重視したシンプルな構造。家具調を意識した木製の飽きの来ないデザイン。拍手にこたえつつ、ジョブスが
「人間がリビングで最初に必要とする家具はなんだろうか。それは某社製品のような重厚長大なテーブルではない。テーブルより先に、まず“座る”必要があることを忘れてはいけない。わたしたちが求めているのは真にシンプルなイスなのだ」
とライバルにやんわり釘を刺すと、会場のApple信者からは「さすがジョブス。頭はハゲているがすばらしいセンスだ」と惜しみない賞賛の声が巻き起こった。
実はジョブス氏は、家具事業に豊富な経験をもっている。一時Apple社を追放されていた期間、同氏は「NeXTcube」と名付けられたイスを製造販売して糊口をしのいでいた。特異な直方体デザイン、マグネシウム合金削り出し、ヘンなオッサンが乗っても壊れない頑丈さ──がウリのNeXTcubeはしかし、家具として重すぎたために売れ行きがかんばしくなかった。iChairには、こうした過去の苦い経験がふんだんに活かされている。氏は「Microsoftの家具はわれわれが10年前に通ってきた道だ」と自信を見せる。
日本では大塚家具が総代理店となり、6月から販売を開始する予定。パッケージ予価は65万円。足ががたつくときにユーザーが自分でカスタマイズできるよう、紙ヤスリがセットとなる。