他人を疑うことを前提とした機械の存在は青少年を疑心暗鬼にさせ、すこやかな成長を妨げる─そんな批判が、いま巷間で急速に盛り上がりつつある。該当機器を製造するメーカー経営者の道義的責任を問う声も強まっており、なんらかの規制策が必要となるのは必至だ。
問題になっているのは、いわゆる
「偽札鑑定機」
の存在。最近では商店のレジや自動販売機の紙幣投入口に数多く備え付けられている、ごくありふれた機器だ。ところが批判的立場にたつ人々の主張によれば、こうした機器に幼いころから触れて育った子どもたちは
「人間は“いつ偽札を使うかわからない”ような悪人ばかり」
と思い込むようになり、他人を疑うクセがついて人間力が低下するほか、一歩間違えば犯罪者になることもあるという。
統計的に見ても、偽札鑑定機が普及しはじめた時期はメディアで“青少年による凶悪犯罪増”が指摘されるようになった時期とみごとに一致する。もはや鑑定機が子どもに悪影響を与え犯罪に駆り立てているのは明らかであり、識者のあいだでは「早急な規制が必要だ」と訴える向きが大勢を占める。
いっぽう、鑑定機メーカー側ではこうした因果関係について否定し、全面的に争う姿勢を見せている。業界シェアトップ・松村テクノロジー(本社:東京)の松村喜秀社長は、弊紙取材に対し
「科学的見地によらないひどい感情論。製造の自由を侵害する可能性もある。こんなことで企業活動はリセットできない」
と主張。まったく悪びれないようすで有害機器の生産を続ける方針を明らかにした。世論と乖離した同社長の強硬姿勢がどこまで続くのか、今後の展開から目が離せそうもない。