01年6月に痛ましい児童殺傷事件の起きた大阪府の池田小で、全児童の所在を把握できるよう「上履きにICタグを取り付ける」システムの実験がはじまった件について、批判の声があがっている。
「位置がすぐわかってしまうので、好きな女の子の上履きを隠せない」
というのだ。児童の安全と、芽生え始めた幼い恋心をどう両立させるか─関係者は難しい問題への取り組みに直面することになった。
池田小のシステムは、非接触式ICタグによって校内にいる児童の位置を確実に把握し、緊急時の避難誘導などに活用することを目的としたもの。しかし、ICタグの埋め込み箇所として「常に肌身離さず身につけているから」という理由で“上履き”を選択したことが、新たな問題を生んでしまった。上履きをこっそり隠しても、システムを流用することですぐに見つかってしまうのである。
この問題を指摘しているのは、上履き問題に詳しい小学生で都内在住の北沢たかしくん(11)。たかしくんは、かねてから同じクラスの久美ちゃん(11)の上履きを隠しては困らせてきたが、
「池田小のシステムが実用化されればこうしたことができなくなる。体育館裏の草むらに隠したのがすぐバレてしまう」
と憂慮する。「上履きを隠せないなら、このもやもやした気持ちをどのように表現すればいいのか…」と悩みは尽きない。
児童心理学が専門のジャン・ピアジェさんは、
「上履き隠しは思春期の萌芽であり、ヰタ・セクスアリスだ。上履きを隠せない環境で育てれば子どもは性欲の正常な昇華のしかたがわからなくなり、成長につれてこころが歪んでいってしまう可能性もある」
と危険を指摘。「計画見直しの必要があるのでは」という。また、一部で出ている「タグをつけるのを縦笛にしてはどうか」という代替案については、さらに大きな問題をはらんでいるため「けっしておこなってはならない」と声を荒げていた。