春も近づき、いよいよ全国の学校が卒業式シーズンを迎える。東京の都立小中高各学校ではのきなみ、教育委員会の指導のもと厳粛な“無人卒業式”が挙行される予定となっている。
足立区のとある都立高。体育館で、間近に迫った卒業式のリハーサルが行われている。誰もいない会場では壇上に美しき日の丸が掲げられ、厳粛な君が代の歌が流れている、ようだ。
無人卒業式導入のきっかけになったのは、昨年三月に中村正彦・都教育長が示した
「卒業式の出席者は適切に人選するように」
との見解。日の丸・君が代に敬意を払わない反日思想をもつ疑いのある者は出席させないように、との指示だ。学校現場では「起立・斉唱を強制させるより民主的」とおおおむね好評だ。
「最近はIT技術が進化していますからね。無人での式進行は意外に簡単でした」と体育館の外で語るのは、先の高校の校長。司会進行は合成音声、君が代演奏のキュー出しはリモコンで完全無人化を実現した。会場には来賓・生徒はもちろん、校長も入場は許されない。深層心理下で反日思想をはぐくんでいる可能性があるからだ。取材した記者も観覧は許されず、場外でたばこをふかす校長とひとしきりおごそかな時間を過ごした。
無人卒業式は「訪れる政治家や教育長の愚にもつかない祝辞を聞かなくてすむ」と生徒にも人気。他県からも「導入の参考にしたい」と問い合わせがあいついでいる。美しい日本を実現するあたらしい式のかたちは、今後全国に広がっていきそうだ。