ネットベンチャーの雄と呼ばれる二社のあいだで、確執が拡がっている。いっぽうはBuzzwordを駆使したプロモーション能力に定評のあるFeedpath社。もういっぽうは、非モテ童貞層の熱狂的な支持を集める株式会社はてなだ。
14日午後、都内・六本木でスピーチを終えたFeedpath社COOの小川浩は、ショットグラスに注いだウイスキーを一気に飲み干して荒れていた。
「なぜ今日なんだ!
当てつけとしか思えない!」
この日の朝、はてなが発表したプレスリリースのことだ。はてな社長の近藤淳也が、自転車留学のためアメリカに渡航するという内容だった。ニートの多いネットユーザーから
「社長の立場を捨ててまでニートに戻るなんて」
「やっぱり自転車をあきらめてなかったんだ」
と好感され、同社株は急上昇。ソーシャルブックマークサイトでのブックマーク数も1,000近くにのぼるなど、ネットの話題を独り占めした。
いっぽうこの日は、Feedpathが「Magroformats対応新サービス」を発表する晴れの日でもあった。小川は事前に自分の日記で「ブログを進化させる」「魔法」「革新的」などと期待感を煽り、発表会にはスーツ萌え腐女子狙いのスーツ姿で登場するなど万全の体勢で臨んだ。しかし、内容があまりにも抽象的すぎたためニートにはまったく理解されず、報道記事へのブックマーク数も十数件と低迷。近藤と対照的な注目度に終わった。
社長を商品化し世間の耳目を集めるというはてなの悪辣なやり口に、小川はじめFeedpath社内では反感が爆発しかけているという。
「ボウズマンを送りつけて一気にケリをつけるか」
との過激な声も聞かれるなか、小川が先頭に立って「マッシュアップ手法によるWeb 2.0的はてなのdisりかた」を検討中だ。はてな側の無自覚な挑発が続けば、ネットを舞台にベンチャー同士の抗争が勃発しかねない。
ネットベンチャーに詳しい業界人は、
「こんな騒ぎを起こしながら、近藤氏はアメリカにもっていくファイナルファンタジーセットの準備にいそしんでいると聞きます。小川氏が怒るのもムリはないでしょう。しかし“社長を海外に追い出す”というプロモーションはコロンブスの卵的すばらしいアイデア。ムダな給料を払わずにすむし、元手もかからない。うちも社長をイラクに送ろうかな」
と先行きを危ぶんでいた。
(文中敬称略)