地上デジタルテレビ放送(地デジ)は12月1日より東京タワーからの送信電波を10kWに増力。関東圏での受信可能地域が大幅に拡大し、普及へと王手をかけた。いっぽう問題になっているのはなかなか地デジへの切り替えが進まない、従来のアナログ電波受信者だ。アナログ電波は2011年7月で送出を停止する予定だが、電波受信者側の対応は予想を下回る遅さで当局を悩ませている。
茨城県在住の千乃佳子さん(45歳)。10年前、突然天啓を受けて以来の熱心なアナログ電波受信者。ベテルギウス暗黒星雲に住む造物主「エロヒム」とのやりとりに電波を使っている。今では熱心な信者およそ200名に囲まれ、全財産の寄進をうけて悠々自適な生活を送っているが「これもアナログ電波のおかげ」と千乃さんは語る。地デジへの切り替えは考えていないという。
アナログ電波が停波すればエロヒムの預言を地球に伝えられなくなる。みわざの届かなくなった地上は荒廃し、人類は2011年7月で滅亡する
と当局の強硬なスケジュールを批判し、期限までにもっと財産を寄進すべきだと主張する。
東京タワーからのアナログ電波を受信して動いている吉田孝弘さん(32歳)は「地デジに切り替わると0か1かしか考えられなくなる」と悩んでいる。
今は起きているあいだじゅう「小泉首相は日本会議とユダヤ資本の傀儡」「フリーメーソンの黒幕が35億年前の火星から日銀を操っている」など柔軟でアナログな思考が可能だが、地デジに切り替えたらどうなるのか…
との不安から、なかなか踏み切れずにいるという。
総務省では「地デジでも電波の中身は変わらない」とし、利用者の不安払拭に躍起だ。今後は「有名政治家に地デジ電波を受信してもらい、あんしん・あんぜんをアピールする」と啓蒙キャンペーンを展開していく予定。「地デジ切り替えは日本の電波立国に欠かせない重要なマイルストーン。フォーマルハウトからおじいちゃんがおいでおいでしている」とのことだ。