人材派遣大手のパソナグループは24日、一時閉鎖となっていた東京・大手町の地下農場「パソナ・オーツー」を再開すると発表した。農場設営場所を近隣の別ビル内に確保できたほか、ネックとなっていた安価で良質な肥料の供給源にもメドがついたため。さらに、試験的に運営されていたこれまでとは異なり、収穫した米・野菜類は一般市場に出荷しビジネスベースに乗せる予定という。派遣会社主導で切り拓かれる日本の新たな農業と食の姿が見えてきたかっこうだ。
人工光と水耕栽培による都市型農場であるパソナ・オーツーは、これまで同社本社ビル地下で運営されてきたが、ビルオーナーによる賃料値上げと肥料のコスト高からいったん閉鎖が決定していた。だが、大手町のグループ企業ビル内で用地を確保できたこと、さらに昨今の「派遣切り」により
“タンパク質を主成分とする良質な肥料”
が安価かつ大量に得られたため、再開されるはこびとなった。
さらにパソナが試算したところ、オーツーでは市場価格を大幅に下回る低価格で農作物を収穫できることが判明。労働力として派遣先にあぶれた登録者を無料でこき使えるほか、三重・愛知・日比谷公園から供給される肥料の安さが低価格のカギとなったようだ。このため、安価で良質な生鮮食品を提供する新ブランド
「パソナグリーン」
を立ち上げ、一般市場に乗り込むことが決まった。同社広報部では「未曾有の大不況により明日の食べ物にも困る人々が増えている。パソナグリーンならこうした問題を解決できる」と自信をうかがわせる。
パソナ・オーツーに詳しいチャールトン・ヘストンさんは、
「パソナグリーンは人間だ」
と難解なコメントを寄せているが、おそらく「農業は人間と同じようにだいじに育てなくてはいけない」ということを指した比喩と見られる。人材の育て方・捨て方には定評のある派遣企業が運営する農場だけに、この点では心配ないだろう。今後は都市型アグリビジネスを展開する派遣会社が急増しそうだ。