甘利明経済産業相は5日、12年までに国内の白熱電球を全廃する方針を正式に表明した。これに伴い、大忙しとなっているのがマンガ本を販売している書店などの従業員たちだ。発表から一夜明けた6日、各地の書店店頭では在庫のマンガに墨塗りを施す作業に追われる店員たちの姿が見られた。
新宿の紀伊国屋書店アネックス。この日、アルバイトを含めた店員およそ20名は始業時間の10時からつきっきりで
「白熱電球の出てくるマンガのコマを墨で塗りつぶす」
という作業に追われた。都内でも最大級のマンガ在庫を抱える同店だけに、作業は一日では終わらず「翌週いっぱいかかるのではないか」(同店担当者)という。
墨塗りの対象となっているのは、手塚治虫や藤子・F・不二雄など古典的な作家の作品が多い。店員は1ページずつめくり
「のび太がくだらないことを考えついて電球を光らせているシーンはないか」
「ブラックジャックがひらめいているシーンはないか」
などと丹念にチェック。見つけると墨で真っ黒に塗りつぶす。中には業務と関係のない萌えマンガなどを読んでうつつを抜かすバイトもおり、作業に時間のかかる一因となっているものとみられる。
本来なら墨塗りではなく原稿をシールで貼り替えるなどの対応をすることが望ましいはずだが、出版社側で
「“ひらめき”を表す漫符を白熱電球以外の何にするかで統一見解が出ず、対応が間に合わなかった」
ことから今回のように暫定的な措置をとることとなった。今後、小学館などが中心となって「蛍光灯を使うか、LEDランプにするか」などの話し合いを進めていく予定だという。業界の混乱ぶりに、二酸化炭素排出量削減への道のりの険しさをまざまざと思い知らされた。