「あの人は地頭力がある」─最近、会社員のあいだでよく聞かれるこういったフレーズ。「地頭」が今、空前のブームを呼んでいる。地頭らしくふるまえる人は職場での評価もうなぎのぼり。その勢いは「泣く子と地頭には勝てぬ」と言われるほどだ。果たして、地頭力のある人の仕事はどう違うのか。実情にせまった。
練馬区月見台のとある小学校。
「おまえのものはおれのもの。おれのものもおれのもの」
強力な地頭力を発揮しているのが剛田武くん(10)だ。同級生の所有物はすべて巻き上げ、気に入らない者は死刑。まさに鎌倉時代の地頭を現代において体現したかのようなスキルの持ち主である。地頭力のおかげか「金持ちの子が取り巻きについて離れない」「空き地でリサイタルを開くとみんな来てくれる」など人望もきわめて厚い。
こうした地頭力が必要となるのは特に企業経営者だと言われている。「百姓は生かさぬよう殺さぬよう」という基礎的な地頭スキルは、徹底したサービス残業の押しつけやベースアップゼロ回答完遂に欠かせないからだ。地頭力を発揮するうちに人望が自然と高まり、周りに「イエスイエス」と言う社員ばかりが集まってくるとの報告もある。まさに日本社会に生きていくうえで必須の能力と言える。
ビジネススキルに詳しい大前研一さんは「日本古来の価値観が現代ビジネスマン社会でも通用するという好例」としつつ、地頭力のさらに次のステージとして
「代官力」
の登場を予言する。黄金色のもなかをたくさん食べたり、いちご屋と仲良くなったりするスキルで、公共事業の受注には必須だという。記者も地頭力はもちろん代官力をも修得して、和装美女の腰帯をぐるぐるほどいたりしてみたいものだ。