密室でおこなわれる不透明な取り調べを可視化するため、警視庁が来年度から録画による記録を予定している件について、早くも捜査現場から反発の声が上がっている。第一線で捜査や取り調べに従事する刑事たちが、
「録画ならこれまでも徹底しておこなってきた」
と異を唱えているというのだ。
東京・新宿にある警視庁七曲署。
「ウチではもう、1972年から捜査過程を録画していますよ」
と憤慨するのは捜査一係の藤堂俊介係長。これまでに記録してきたビデオは延べ718時間ぶんにも及ぶ。「開かれた警察」を意識し、徹底した情報公開をおこなってきた。その対象は取り調べ風景にとどまらない。若手刑事の死亡率の異様な高さで知られる同署では、なんと刑事の殉職シーンまで記録・公開しているのだ。取材する記者に「なんじゃあこりゃあ!」と叫びながら死んでいく刑事の映像を見せながら、藤堂係長は「これでも可視化が足りませんか」と涙ぐむ。
同様に可視化に取り組んできた事例は枚挙にいとまがない。城西地区の警視庁西部署、多摩川市田園プラザの97分署、警視庁組織犯罪対策部特命係…。各署の捜査記録映像は、合計すると千時間ぶんを超えるとの推計もある。事実であれば、左翼偏向メディアが「取り調べが不透明」などと警察を糾弾するいっぽうで、実際にはきちんとした可視化がおこなわれてきたということになる。こうした認識と実態の乖離ぶりに、西部署の大門部長刑事は
「自分たちの努力が足りないばかりに…ふがいない思いです…」
と、レミントンM31を握りしめてくやしさをあらわにする。
こうした現場からの指摘に対し、警視庁の担当者は
「実態の調査が不足していた可能性がある。真摯に再検討したい」
との見解を明らかにしている。ビデオ録画ではなく、マンガや小説による取り調べ記録で代替してもよいのではないか、との案も出ているという。