このところ急激に冷え込みが激しくなり、各家庭ではストーブがフル稼働をはじめている。しかし、原油価格が高騰し続ける折りも折り。暖房を「できるだけ安くすませよう」とガスに切り替える人々の増えた影響で、都市ガス需要が異例の急拡大。生産現場では主婦パートらが
「ガスを出すのが追い付かない」
と黄色い悲鳴をあげている。
東京・有明にある東京ガス第一工場を訪れた。早朝だというのに、ラインに並んで黙々と焼きいもを食べる女性たちの姿がずらり。彼女らが腰掛ける白磁の椅子からは、ゴウゴウと音を立てるダクトが延びている。発生したガスはこうして集められ、都市ガスとして各戸へと配送される。ここで働く数千の臀部こそ、首都圏の暖房を支えるガス供給システムの中核というわけだ。
「苦しいですけど、やりがいはあります」
と焼きいもを休みなくほおばりながら語るのは、この道十年のベテランであるA子さん(仮名・38)。食べるだけでお金がもらえる─と聞いて業界で働き始めた。たしかに夏場などはそういったイメージどおりの楽な仕事だが、需給のひっ迫しているこの冬はかなりキツいという。
「ノルマ達成にはかなり力む必要がある。だが、ガスだけ出すのは経験を積まないと難しい。悲惨な事故を起こし、泣きながら辞めていく若い娘が今月はもう何人も出ている」
とのこと。
こうした事態を受け、東京ガスは原料に焼きいもだけでなくヨーグルトをまぜるなどさまざまな対策を講じているという。しかし、においがよくなった程度でめぼしい成果は得られていないのが現状だ。同社広報部は「生産ラインに女性だけでなく男性も投入するという最悪のケースも見据えて準備を進めている。それ以外では気温の上昇、需要の落ち着きを祈るしかない」と話している。