東京都下の複数の繁華街に出没していた「看板の上で眠る猫」。名前、目的、いずれも不明とされてきたこの謎の猫の正体が、このたびようやく明らかになった。警視庁は「世界の滅亡を引き起こしかねない悪質な行為。厳しく処罰したい」と、因果律保護法違反で捜査をはじめた。
問題の猫は、銀座・池袋・吉祥寺などで回転式の看板の上で眠るようすが8月から相次いで目撃されていた。一匹の野良猫がこれだけの距離を自力で移動するとは考えづらいため、当初は「たまたま似たような猫が同時多発的に似たような行動を取ったもの」と見られていたが、「別の猫にしては見た目がまったく同じ」「同時に複数の場所で観測されている」などと説明のつかない点が多いことから、インターネットで有志が調査を開始。その結果、猫の正体が伝説の
「シュレーディンガーの猫」
であることが判明した。
シュレーディンガーの猫とは、存在が確率でしか確認できない形而上の生物。かつてその能力を悪用し、空間の複数の地点に普遍的に一定の確率で存在するなどして物理学の常識を脅かしたため、シュレーディンガー博士により魔法の箱に封印された。今回調査に協力した物理学者は、
「複数の地点に同時に現れているという特徴から、シュレーディンガーの猫にほぼ間違いない。何者かが封印を解き箱を開けてしまったのだろう」
と語る。
シュレーディンガーの猫を放置し続けると、因果律が崩壊し「体重がダイエット前に戻る」「銀行預金にまったく利子がつかない」などの問題が起こるという。警視庁時空捜査一係は
「因果律保護法違反のれっきとした犯罪。猫が子どもを産みパワーアップしている点も悪質だ」
と、封印を解いた犯人を捕らえるべく本格的な捜査に乗り出した。場合によっては同庁が保有する超時空生命体「ラプラスの魔」を解放し使用することも検討中だ。