安倍首相がみずからの進退を賭して継続の意向を示した、海上自衛隊によるインド洋給油活動。アメリカが掲げる“対テロ戦争”という錦の御旗に対し国際的に疑問が投げかけられるなか、なぜそこまでこだわるのか…。その背景には、公言されていない給油活動の真の目的がある。実は給油を受けているのは米軍艦船ではなく、海外在住の日系人グループだったのだ。
「自衛隊には本当に助けられている。毎日新鮮な油をなめられるのは彼ら、そして日本のおかげだ」
と語るのは、インド・バンガロール在住の妖怪ラトナシリ・ロクロークビさん(37)。記者の目の前で首を長く伸ばしながら、今朝届いたばかりという油を行灯からおいしそうになめてみせる。彼女は戦後バンガロールに移住してきた日本妖怪の二世だ。
この地方には太平洋戦争終結後の混乱期、生活苦にあえぐ日本妖怪たちが新天地を求め多数入植してきた。その数およそ5,000世帯。比較的妖怪に寛容な土地柄のため地域に溶け込むのは容易だったが、問題は食文化の違い。インドでは牛が聖別対象となっているなどの事情から、妖怪の好む新鮮な油が入手しづらい。そこで入植した油すまし一族が母国日本から食用油を輸入する独自ルートを確保していたが、先のスマトラ沖地震で輸送船や陸揚げ設備が壊滅。以来現地コミュニティでは日々の油の調達にも事欠くようになっていた。
これに「元は同じ日本人。超法規的措置で救済したい」と乗り出したのが安倍首相。祖父の岸信介が妖怪だったこともあり、同胞の窮地を見過ごせなかったもよう。対テロ戦の名目で海上自衛隊を使った妖怪への油供給に陰ながら尽力してきたというわけだ─。日系三世のパンジャーブ・ネコマタくん(12)は訴える。
「アベさんに会えたらありがとうと言いたい。日本の人たちもアベさんを助けてあげてほしい。じゃないと七生祟る」
妖怪には評価される首相の人徳が一般の国民にも届く日は来るのか…。まさにこれからが正念場と言えそうだ。