4月。新年度を迎え、街には初々しい女性社員や女子大生が溢れている。彼女らの放ついい匂いにウキウキしている読者も多いことだろう。だが、モテない男性は女性に近づくチャンスがない。とりわけ通勤電車での「女性専用車両」の普及が、疎遠に拍車をかける。…そんな現実の厳しさを解決してくれる新ビジネスが、いま人気を集めている。
「今日朝イチの取れ立てです!」
「いい匂いがしますよ!」
東京メトロ・半蔵門駅の出入口で、売り子が威勢のいい声をかけている。中年のサラリーマンやいかにもモテなさそうな男性が足を止め、興味深げに眺める。売られているのはいま人気の
「女性専用車両の空気カンヅメ」
だ。
製造・販売を手掛けるのは都内のベンチャー企業「エアリーカン」。社長の吉田政利さん(62)が昨年末立ち上げた。ヒントになったのは、会社員時代に聞いた「最近、通勤電車で若いコの匂いがかげなくてさびしい」との同僚団塊世代のぼやき。「これはビジネスになる!」と感じた吉田さんは脱サラして独力で起業。製品化にこぎつけた。
製造過程は企業秘密とのことで見せてもらえなかったが、朝一で女性専用車両の新鮮な空気を採取。合成保存料などはいっさい使わず、天然そのままの空気を詰めて販売しているとのこと。売れ行きは上々で、記者が取材中にも上から下までユニクロで固めたモテなさそうな男性が2缶購入。
「半年ぶりに女性の匂いをかげます…」
とうれしそうに去って行った。
まだまだ思わぬところにビジネスチャンスは埋まっているものだ。そう感服させられた取材だった。帰社後、参考のために買った缶詰を開けてみると、梅雨どきの洗濯物のようななつかしい匂いがした。