松下電器産業系のパナソニックネットワークサービシズは29日、同社が運営するインターネットプロバイダ「ハイホー」を12億円で業界大手のIIJに譲渡するとの決定を明らかにした。同社はメーカー系プロバイダとして10年以上にわたって独特なサービスを提供し続けてきた。事業売却を突然知らされた現場では、独自性を支えてきた“こびとさん”たちがリストラの不安にさらされている…。
「ハイホー!」
「ハイホー!」
かん高いかけ声が、あたりにこだまする。都内のとあるビルの地下室。ここはハイホーのネットワーク中枢部となっており、多くのこびとさんがインターネット各地から送られてきたデータを交換しあったり、利用者宅に送り届ける作業をしている。
「ブロードバンド化が進んで仕事はたいへんになりましたが、やりがいはありますね」
と汗を拭きながらにこやかに語るのは、こびとのひとりであるタワバさん(約120歳)。
ハイホーの独自性はここにある。同社は他の凡百のプロバイダと異なり、ネットワーク物理層に
「音声」
を採用。こびとさんが声をかけあうことで、データのやりとりをしている。サービス名のハイホーも採用技術を反映したものだ。
「センスがないからこんな名前なんじゃないんですよ。センスがないのはbiglobeです」
とタワバさんは苦笑い。
ハイホーの手法は人件費がゼロなのでコストが安くすむほか、「寝ている間にダウンロードが終わった」など人間味あふれるエピソードで顧客から高評価を得てきた。しかし末端の加入者回線で光ファイバー化が進むと、音声伝達を前提としたインフラが足かせに。業績はふるわず今回の売却決定につながった。
身売り先のIIJでは「こびとさんの雇用は当面維持する」と約束するものの、ハイホーと異なりのろしを物理層に採用している企業だけに先の見通しは暗い。「脱サラして靴屋にでもなりましょうかね…」と語るタワバさんの目は、どこか悲しそうだった。