独・チューリンゲン大の研究班が発見した3万5千年以上前の古代人のフルートを検査したところ、不可解な痕跡がみつかり論議を呼んでいる。フルートの吹き込み口部分に、持ち主と見られる女子と、もうひとり別の男子の唾液のあとが付着していたのだ。「個人用の楽器に、なぜ二人ぶんの唾液がついたのか。当時の生活習慣は今とはかなり違うものだったのかもしれない」と研究者らは首をひねっている。
このフルートはドイツ南西部ウルム近郊のホーレ・フェラスル洞窟から見つかったもので、地層の状況や炭素同位体分析から3万5千年前に使用されていた「世界最古級」のものと判定され、注目を集めていた。当時の人類の暮らしぶりにせまるため、チューリンゲン大がさらに詳しい調査をおこなったところ、吹き込み口から唾液由来と見られるヒトの体細胞DNAを発見。分析した結果、
- 内側から持ち主と見られる若い女子のDNA
- その上全体をなめ回すように男子のDNA
と、二人ぶんのDNAがついていることがわかった。
同大学の研究員は、
「古代とはいえ、直接口につけるものを二人以上で共有するとは考えづらい。当時と現代とでは生活習慣や衛生観念がかなり異なっていたということだろうか」
と首をひねっている。また、男子の唾液痕からは性的興奮状況にあったことを示す大量の男性ホルモンも検出されており、男子が「冷静さと集中力が求められるフルートの演奏中にハァハァしていた」としか思えないため、ナゾまたナゾを呼んでいる状況だ。
なお、フェラスル洞窟の追跡発掘調査では、さらに
- 女子の名前の書かれた上履き
- 女子の名札のついた体操着
などが土中に隠された状態で発見されている。誰が何のために集め、隠したのか。古代の人々の生活実態を把握するには、まだまだ時間がかかりそうだ。