中国政府がデジタル家電を国内で流通させる場合に内蔵プログラムのソースコードを全面開示するよう求める方針を決めたことを受け、各国家電メーカーに激震が走っている。技術ノウハウや知的財産の流出が避けられないためだ。そこで一躍脚光を浴びているのが
「非ノイマン型蒸気コンピュータ」
技術だ。各メーカーは「同型のコンピュータを搭載すれば開示義務を回避できる」と大きな期待を寄せている。
現在一般的な電子式コンピュータは「ノイマン型」と呼ばれ、メモリ素子に記録されたプログラムを逐次読み出して実行する。非ノイマン型蒸気コンピュータでは、
論理演算可能な蒸気ピストンブロック(スチームトロン)を物理的に組み合わせることで処理工程を決定する
しくみになっており、プログラムが存在しないためソースコード開示の対象にならないというのだ。
識者によれば、
「技術的にはたいして難しくはなく、たとえば現在のDVDプレーヤーの中身を非ノイマン型蒸気コンピュータに置き換えるのは筐体容積がおよそ150倍になることを除けば実現可能」
という。家電各社では、蒸気機関や小型ピストンを得意分野とする企業との連携が必須と見て、早くも各方面に打診を始めている。
非ノイマン型蒸気コンピュータへの切り替えは、国内中小企業への特需にもつながるという。鋳物の町として知られる埼玉県・川口市。スチームトロンにはじょうぶな鋳物が不可欠とあって、冷え切っていた工場の炉に再び火が戻りつつある。同市で鋳物工場を営む大里大二郎さん(68)は
「これで不況を乗り越えられるかもしれない。中国のおかげですよ」
と語りながら、西のほうに向かって手を合わせていた。西川口への深い愛着を感じさせられた。