12日は成人の日。全国各地では盛大に成人式がおこなわれ、みごとに成長した新成人が新たな門出を祝った。いっぽう、地域によってはいにしえより伝わる独特の成人の儀式をとりおこなうところもあり、参加者・観衆ともども伝統行事に熱心に取り組んでいた。
栃木県二宮町では12日、成人式で町長が祝辞を述べたあと
「しもつかれ強飯式」
がおごそかにおこなわれた。しもつかれ強飯式は、栃木県全域で見られる独特の奇祭。おとなの栃木県人になった証として、栃木の珍味“しもつかれ”を衆人環視の中で食べるという一種の通過儀礼だ。県南部では、しもつかれをイチゴの「とちおとめ」や「佐野ラーメン」に変えて実施する風習もあるが、本流はやはりしもつかれだ。
会場では、新成人を先輩男女がペニスケースひとつの半裸となりヤリを手にもった姿で円を描いて取り囲む。太鼓のリズムに乗って「エイ、ホ、エイ、ホ」と踊り狂う先輩たち。新成人はひとりずつかがり火の前に進み出て、
「エイ、ヤッ」
の掛け声とともに差し出されたゲ…もとい、しもつかれ1キロを完食させられるのだ。みごと食べきった者はおとなの栃木県人とみなされる。いっぽう、食べられなかった者は非県民として「家に回覧板が回ってこなくなる」などさまざまな嫌がらせを受けるという。時おり、茨城や群馬のスパイがしもつかれを前に発狂してあぶりだされるという思わぬ副次効果もあるとか。
二宮町では今年218人が強飯式に参加。古き良き伝統を守る寒村だけに、みごと200人がこの儀式を乗り越えおとなとして認められた。だが同町は今年3月に栃木文化の廃れた真岡市と合併してしまうため、「来年以降はクリアできる人数が減るのではないか」と危機感をもつ町民もいる。栃木県教委によると県内の新成人は約2万人。毎年減少傾向にあり、少子化を考慮しても他県に比べて急激な減少カーブを描いているが
「原因はわかっていない」
という。