フリーペーパーのミニコラムや電車の車内放送、ポータブルゲームコンテンツなど…。各方面で引く手あまたなのが
「おとなの常識」
を教える読み物だ。常識ある日本人の育成にも一役かっている。しかし、活用の舞台が増えるにつれカンジンの常識の在庫が枯渇する事態が深刻化。かわってこうした読み物の編集者やライターが目を向けているのが“世界”だ。
「向こうから同じ部族の既婚者の女性がタロイモをもってやってくる。未婚男性のあなたはどう挨拶すべきか」
正解は「股間を見せつけにこやかに微笑む」。パプアニューギニア島ニラウカワ族なら誰でも知っている常識だ。都内編集プロダクションに勤める田中泰次さん(32)が、現地取材で苦心して収集してきた珠玉のひとつである。
車内放送向けの常識コラムを書いている田中さんも、かつては日本国内の常識を題材にしていた。しかし、書き続けているうちに
「訪問先の家屋が清朝末期様式だった場合、みやげものはいつ渡すべきか」
といった当たり前の常識ネタの在庫が払底。そこで目を向けたのが海外だった。「世界には、われわれが知っていなくてはならない常識がまだまだいっぱいあるはず─と思ったんです」と田中さん。
以来、ニューギニアやコンゴ奥地など世界の秘境をさまよって集めた常識の数、およそ1万。「こんなにたくさんの常識を知らずに生活していたなんて、おとなとして恥ずかしい。読者のみなさんにも知らしめ、人間力を向上してもらわねば」と田中さんは使命感に燃える。ちなみに、中でもお気に入りの常識ネタをひとつ教えてもらった。
「はじめて訪問した部族の村で、族長が噛んでいたコカの葉を差し出してきた。あなたは何回噛んでみせるべきか」
おとなのあなたなら、まさか正解はわかりますよね…?