3日の桃の節句を前に、都内で活況を呈している講座がある。
「ひな人形すばやく片付け講座」
だ。本番が近いここ数日は、受講生の練習にもいっそう熱がこもる。
池袋・東武百貨店のコミュニティカレッジ。会社帰りの女性をターゲットにこの講座を開くようになってはや数年。30代後半のOLを中心に、毎回申し込みが殺到し抽選となる人気ぶりだという。実際の講義風景を拝見させてもらうと、演技用の模擬ひな壇を前に20人ほどが真剣なまなざしで片付け練習の真っ最中だった。
4日深夜0時を迎えた想定で時計のベルが鳴ると、順番の来た女性がサッと飛び出す。訓練のたまものか、肉眼ではまったく動きが捉らえられない。お内裏さま・おひなさま…が次々と段ボールの中に消えていく。ひな壇がすべてしまわれるまで、わずか15秒23。しかし他の受講生は
「まだムダがある」
「そんなんじゃ行き遅れるよ!」
と批評に容赦がない。ここには命をかけたやりとりがある…それが肌で感じられ、とても「もうすでに行き遅れているのでは」などと疑問を差し挟む余地はなかった。
講師の櫻井よし子さんは、
「ジェンダーフリーの陰謀で、ひな人形をすばやく片付ける教育を受けられなかったことが、結婚できない女性の増加、ひいては少子化につながっている。こうした対策はもはや待ったなしだ」
と、講座の社会的意義を語る。受講生は全員10秒を切れるようになるまで鍛えあげられるほか、万一の際には一瞬で周囲を片付けられるように原子爆弾を体内へ埋め込んでもらえる。晩婚化の解決の端緒を見たような気分に満足して、現場をあとにした。