あいつぐいじめ自殺で子どもたちはどんなに暗い日々を過ごしているか-と心配している親は多いことだろう。しかし現実の小中学生はさにあらず。彼らのあいだではいま新しい遊びが流行中。すこやかな笑顔を育んでいる。その遊びの名は
「強行採決」
だ。
取材のためさっそく訪れたのは都内にある港区第3小学校。5年2組の教室で、議長役の児童の声がひびく。
「起立多数。
よって本案は可決いたしました」
席の3分の1強は空席だったが、与党役の子どもたちは拍手で喜びをかみしめあっていた。この日決まったのは
「貧乏な家の子は他の子の宿題をやってくる基本法」
だった。
強行採決ごっこは、クラスを「与党」「野党」の2つに分けて行われる。ただし、与党になれるのは親が2代にわたって金持ちか、熱心な新興宗教家の子どものみ(ローカルルールによっては現金やカラダで与党役を買うこともできる)。
2つにわかれたら野党役の子は外に追い出される。ここからが「本会議」のはじまりだ。なるべく親の七光りだけで生きてきて無能そうな子が「法案」を提出。形式ばかりの審議をして、シャンシャンで採決する…というのが基本的な流れ。この遊びに詳しい岸信介くんは語る。
「なるべく愚にもつかない、国家百年の計を誤るような法案ほどおもしろいんだ」
過去には
- 貧乏人は口ごたえせず金持ちを敬い、国旗に忠誠を誓えの法
- 一万人のエリート以外は大学行こうとかムダなあがきをせず、日本史だけ勉強してろの法
などが採決されたという。
基本的に野党側は何の役にもたたないが、騒ぎ立てて少し審議を遅らせるくらいのことはできる。岸くんによれば、そういうときに暴力団を教室に入れて対抗させたりするのもこの遊びの醍醐味だとか。
強行採決ごっこの由来はよくわかっていないものの、多くの子は
「総理もやってるからカッコイイ」
とお気に入りのようす。やはり、次代の「美しい国」を作る子どもたちも立派な指導者の姿を見て育つのだ…ということを実感させられる取材だった。