海外で悲劇的な死を遂げた邦人の遺族に、インターネットを介して温かい支援の輪が…。著作権侵害と誹謗・中傷ばかりと思われがちなネットで、こんな心にしみる美談があった。感動の渦は口コミで広がっており、大手出版社による書籍化の企画も進行中だという。
話の中心となるのは都内在住の久光さやかさん(29)。さやかさんには住友商事に勤務するビジネスマンの夫がいたが、出稼ぎ先のシンガポールで昨夏急逝。死因についてお茶を濁す会社を尻目にさやかさんが独自調査した結果、旦那さんは新規ビジネス開拓の一環で
「オオアリクイの舌を尿道オナニーに活用する技術」
をみずからの身を挺して実験中、刺激が強すぎて腎虚を引き起こし死亡していたことがわかった。名目上は「業務外」の活動だったため労災認定もおりず、さやかさんは経済的補償なしに独り立ちしなければならなくなった。
そんなさやかさんを思いも寄らぬトラブルが襲ったのが、この6月。夫の死のショックから一年が経過し心の傷も癒えようかというそのとき、さやかさんは不運にも夏風邪をこじらせてしまった。とてつもない高熱にうなされ、身体を火照らせることになってしまったのだ。
火照りを止めるには氷枕が必要だが、なにぶん男手のない家庭では氷をくだくこともできない。危急のピンチに陥ったさやかさんは、枕元のパソコンでインターネットに救いを求めるメールを発信した。
「誰かわたしの火照りを止めて!」
奇跡は起こった。ネットの各地から続々と返信が届いたのだ。
「力になれますか?」
「ぼくでよかったら…」
おかげでさやかさんは一命を取り留めることができた。
美談を聞きつけ広く人々に伝えたいと、書籍化を検討中の講談社では
「IT時代になっても人間同士はわかりあえるという好例。“電車男”以上の感動をおぼえた」
と話す。出版は8月末を予定しており、下半期のベストセラーも夢ではないと意気込む。
その後健康を取り戻したさやかさんは、
「ごく一部の心のねじくれ曲がった方には
“アダルトサイトのspamメール”
と勘違いされたようで…。でも多くの方は真摯に受け止めてくださった。感謝しています」
とインターネットのむこうの善意の人々に深々とおじぎをしていた。