米アップルが28日に発表したタブレット型電子端末「iPad」が世界的な注目を集めている。従来型iPodを思わせる薄さはそのままに、画面サイズ9.7インチにまでサイズアップ。アップル信者の所有欲をくすぐらずにはおかないガジェットに仕上がっている。しかし、このタブレット状iPodが実現できた背景に日本の匠の技があったことは、あまり報道されていない。
トンテンカン、トンテンカン…都内大田区で町工場がひしめき合う一角から、小気味よい金属音が響き渡る。吉沢源三郎さん(72)が経営する吉沢板金加工社。アップルと技術提携し、今回のiPad実現の立役者となった。間近に迫った出荷を前に、源三郎さんはiPadの製作に追われている。
同社の朝は早い。アップルから送られてくるiPhoneの不良在庫を加工場に広げ、一台一台を板金加工の技術で叩き延ばしiPadに仕上げてゆく…。げんのうを繰り返し振り落とし、iPhoneが均一に広がっていくよう加工する。やがて約10インチのサイズにまで変形すればiPadのできあがり。中身はiPhoneと変わらないのに信者が喜んで飛びつく商品は、こうして生まれたのだ。
源三郎さんは「叩き延ばす技術はそれほど難しくない。ただ誰にでもできることを頑固に続けてきたら今回の仕事につながったということだ」と語る。実際、iPhoneユーザーの中には自分の端末を叩き延ばしてiPad化した者がすでにいるという。アップル製品に詳しい評論家の林信行さんは「そろそろ陰りが見えはじめてきたiPhoneを、ほとんど廃棄物を出さず新製品に変えるというのはアップルおよびユーザーの高い環境意識の表れ。Windowsとは違う」と評し、改めてアップルに帰依する気持ちの強さをアピールしていた。あなたも手元のiPhoneをトンカチで叩いてさっそくiPadにしてみてはどうだろうか。
- 2010
- 01/28 23:10