手口の巧妙化がとまらない悪質な「振り込め詐欺」に、こんどは「テレパシーで“振り込み指示”を送ってくる」タイプの犯行が急増していることがわかった。携帯電話を使用した詐欺への対策が進んだことを受けて犯行グループが手口を変えたものと見られ、警視庁は「急なテレパシーがかかってきても冷静になって」と注意を呼びかけている。
都内葛飾区に住むA子さん(67)。一人暮らしのA子さんのもとへ「キュピィィン」という効果音とともにテレパシーが届いたのは先月末のことだった。
「母さん? オレオレ」
「ロック? ロックなのかい?」
息子からのテレパシーだと勘違いしたA子さんは、仕事の損失を補填するための金が必要になったと泣きつかれ、最寄りのATMで言われるままに振り込み手続きをしてしまった。テレパシーの主が息子でないとわかったのは、その日の夕方に本人と連絡が取れたあとだったという。
振り込め詐欺については犯人が携帯電話で指示するケースが多いことから、銀行などがATM周辺での携帯電話使用禁止を呼びかけたり、電波が届かなくなる遮蔽スクリーンを導入するなど対策が進んでいる。警視庁では
「テレパシーを使った手口が急増しているのは、こうした防犯施策への対抗だろう」
と見る。
深刻なのは、テレパシーによる振り込め詐欺では被害者がお年寄りに限らないことだ。
- 前世で共に戦った超能力戦士からの念波だと勘違いして100万円振り込んだ32歳独身女性
- 秘密研究所から逃げ出してきた仲間だと思い込んで被害に遭った23歳男性
など、年齢・性別は多岐にわたるという。同庁では「エスパーなら振り込んでもらわなくてもテレキネシスやテレポートで簡単に金を工面できるはず。ATMに行く前に深呼吸して冷静になって」と呼びかけている。