<環境問題即席専門家・武田邦彦さん>
環境を悪化させる「蛮機族ガイアーク」の地球進出が問題となっている。これに対して「炎神のパワーで立ち向かうべき」と主張しているのが、先ごろデビューを果たした「炎神戦隊ゴーオンジャー」だ。しかし、そのようなやり方で本当に地球はきれいになるのだろうか。筆者は彼らが「正義」という錦の御旗で人々をだまし、科学的見地をうやむやにすることでむしろ「環境を悪化させている」と指摘したい。
ガイアークは、たしかにふらちな蛮機獣をあやつり煤煙をまき散らす。だが、それをしりぞけるためにゴーオンジャーは何をしているか。17日の出動のようすから見てみよう。彼らは、たった一匹の蛮機獣に対して徒党を組んで攻撃。この際
「マンタンガン」
などという、いかにも化石燃料をムダづかいしそうな名前の武器を、あろうことか原油価格高騰のこのご時世に濫用した。大気中に放出された二酸化炭素は、実はゴーオンジャーによるもののほうが多かったのではないかと推測される。
さらに、蛮機族がよこした援軍に対して、彼らは異常に巨大なレーシングカーやバスを駆って対抗。このムダに大きなメカ=「炎神」は
「排気ガスを出さないエコカー」
だとゴーオンジャーは主張している。これは問題のすり替えに過ぎない。注目すべきは有毒排気ガスではないのだ。これだけのサイズのメカともなれば当然燃費が悪くなる。大量の化石燃料が浪費され、多くの二酸化炭素が大気中に放出されるのだ。三十年前のヒーローは「バリキキューン」という地球に優しい気球で出動し、怪人に対抗した。比較すればゴーオンジャーが無用な環境負荷を地球に与えているのはあきらかだろう。しかも戦闘中には周囲のビルや道路を巻き添えにして大量に破壊し、巨額の経済的被害を出している。もはや、ゴーオンジャーが活動することがかえって“害悪”になっていることは疑いようがない。
地球は人類にとってかけがえのないものだ。しかし、環境を守っていくために必要なのは「♪前しか見えない」などという誤った正義感ではない。科学的な議論と合理的思考に基づいた判断である。ゴーオンジャーが今のやり方で戦い続ければ、地球環境の悪化はかえって急速に進んでしまう。筆者は
「ガイアークとの平和的共存」
こそが、住みよい環境をできるだけ長く温存する最善の解だと考える。ガイアークも話せばわかるはずだ。とりわけ彼らの女性幹部である及川奈央さんには、筆者もたいへんお世話になっており他人とはとても思えない。政府はゴーオンジャーを逮捕し、ガイアークとの融和路線推進を前向きに検討すべきだろう。