情報処理推進機構(IPA)の理事長で元NEC社長の西垣浩司氏(68)が29日午前、都内文京区の路上で亡くなった。警視庁駒込署の調べでは、
「降っていた雨で不注意にも体を濡らしてしまった」
ことが死因と見られる。西垣氏は若いころ“泥のように”働くあまり体がほんとうに泥になった「IT土方の鑑」として、業界ではよく知られていた。
関係者の話によると、西垣氏はこの日昼に予定されていた打ち合わせのため、文京区のIPAビルを10時ごろ出発。「面倒だから」と傘をささずにビルを出た。しかし、当時都内ではかなりの降雨が。泥でできた西垣氏の体に雨が当たると
「あれよあれよ…という間に、ドロドロと溶けてしまった」
という。ドライヤーをもったIPA職員らがかけつけたものの、ときすでに遅し。あとには汚らしい泥のかたまりとスーツが残るばかり…。
西垣さんは東大法学部卒業後、当時の日本電気に入社。頭を使わず不正も見て見ぬふりをする“泥”としての働き方を完璧にマスター。その泥ぶりがあまりにもパーフェクトだったため、いつしか全身が泥でできた“泥社員”となった。また、仕事ぶりも「人月さえつぎ込めばなんでもできる」という思想に基づくみごとな“泥縄式”で、業界では
「まさにIT土方の鑑」
と尊敬を集めていた。
奇しくも西垣氏は、前日の大学生向けセミナーで「泥のように働け」と訓示をたれ、多くの若者から拍手を受けたばかり。あまりにも早すぎる死に、関係者らは
「少しは日本のIT業界から泥臭さが消えるかも」
とささやきあっていた。