東京では18日から、JR以外の私鉄・バスがいっせいに非接触型ICカード乗車券に対応したが、これにともない各地で思わぬハプニングが起きている。スイカをもたないおじいちゃん・おばあちゃんが、乗車拒否の憂き目に遭っているというのだ。人肌の温かさを置き去りにした高度情報化社会の問題点が、はからずも露呈したかっこうだ。
杉並区に住む町沢ヨネさん(83)も、被害者のひとり。18日朝、公民館で開かれる尺八の定例会に向かおうとバスに乗り込み、
「季節がらスイカは買えんじゃったども、ミカンでおめこぼし願えんじゃろか」
と交渉したものの、血も涙もない運転手にケンもホロロに追い出されたという。「このままでは旬の夏になるまで出掛けられない」と、ヨネさんは困り果てている。
また、世田谷区の時田権三郎さん(75)は、千疋屋の高級メロンを見せつけながら意気揚々と都バスに乗り込もうとしたが、やはり乗車拒否された。
「高かったのに。この時期にスイカを買えるような限られた富裕層しかバスに乗せないつもりか。格差を固定化しようとする石原都政の実態を見た気がする」
と権三郎さん。
事態を重くみた公明党都議団は、「スイカ以外の果物でも乗れる専用バスを作って」と、交通各社への働きかけをはじめた。いっぽう、都バス当局に弊紙がコメントを求めたところ、「シルバーパスを使えば?」という冷たい回答しか得られなかった。