サブプライム問題に端を発する世界的な不況の流れで、内定取り消しを出す企業などが続出し「新たな就職氷河期が来るのでは」と問題になっている。来年卒業見込みの学生たちも、明日はわが身と戦々恐々。できるだけ金融危機の影響を受けない企業へ就職しようと活動に精を出す日々が続いているようだ。そんななか、学生たちに「超優良企業」と注目を集めているのが、
「悪の秘密結社」
だ。
世界的秘密結社の黒十字軍(社長:黒十字総統)。ここも、この数ヶ月で入社希望の学生たちが急増した企業のひとつだ。
「予定していたセミナーに想定を超える千人以上の応募者があり、会場を急きょ石切り場から埼玉スーパーアリーナに変更して対応しましたよ。くる学生もみな積極的で、
“御社の社風にひかれました! 今日からでも働けます! イーッ!”
などという子もいました。もちろん願ったりかなったりですからね。即内定ですよ」
人事を担当する採用仮面さんは語る。
悪の秘密結社といえば、
- すぐ幼稚園バスをジャックする
- 社員の扱いがドライ
- 経営者の顔が見えづらい
といったことから不人気業界のトップをひた走っていた時期もあった。しかし、最近では社保・年金完備など労働環境の改善が進んでいるほか、そもそも事業目的が「世界の破滅」「人類滅亡」などであるため、不況が進めば進むほど事業成績が好転していくという魅力が注目の的となっている。事実、東証やナスダックなどの株式市場では、このところ黒十字軍などの株価が連日上場来高値を更新。学生たちが安心感と将来性に魅力を感じるのもムリもない。また、格差社会の進行により
「こんな苦しい世界はつぶしたほうがいい」
と、企業理念に賛同して志す若者が増えていることも一因のようだ。
いっぽう、悪の組織がすべて事業好調なわけではない点には、注意が必要だろう。新興企業の「蛮機族ガイアーク」は、最近経営陣のひとりが行方不明になるというスキャンダルがあったほか、事業目的に掲げる
「ヒューマンワールドを環境汚染しつくす」
が、不況で各地の工場稼働率が下がった影響で年度目標を大幅に下回る可能性が出てきた。同社の害水大臣兼人事担当ケガレシアが、色仕掛けで学生をだまして引きずり込もうとしているとのうわさもある。就職活動中の若者は気をつけたいところだ。