IT業界で働く人々を「SE」と呼ぶのは不当な差別だ─そんな指摘を受け、これら労働者をより適切な名称で呼ぼうという運動が、いま各方面で活発になりつつある。高度情報化社会が急速に進展するなか、顧みられることのなかった人々の尊厳を取り戻そうとする動きを追った。
SEが差別語、と聞いても若い人々はピンとこないかもしれない。そもそもSEとは、日夜問わずコンピュータを触り続けるあまりまったく女性と関係をもてず、童貞で一生を終える率が高いITワーカーを揶揄した卑語だった。
「“SEX(セックス)”から最後の“X”を取り、
“いつまで経ってもセックスできない童貞”
と冷やかす意味を込めたのが、SEの語のはじまりだとされています」
とは、「童貞の権利を守ろう会」会長の吉田秀文さん(38)の説明。自身も長年「SE」「SE」とさげすまれ、つらい思いをしてきた業界人(もちろん童貞)だ。
「問題は、このことばが言霊的効力を発し、童貞の固定化に拍車をかけていることです」
吉田さんによれば、SEをSEと呼ぶことが当事者の潜在意識に働きかけて「ああ、オレはSEXできないSEなんだ」と思いこませ、結果的に脱・童貞のチャンスをフイにさせているとのこと。これに対抗するには職種名の言い換えを社会に訴えてゆくほかはない。
吉田さんたちの会では、派遣会社などにSEを
- ITアーキテクト
- ITエンジニア
- IT土方
- サービス残業大好きM奴隷
などと改称してくれるよう働きかけて回っている。いくつかの会社では好意的に受け入れてもらえておりSEという業種を消した社もあるものの、まだまだ道半ば…というのが会員たちの見方。「“国電”を“E電”に改称したときのように、なにかもっといい呼び名があれば普及するのでしょうが…」と吉田さん。運動の趣旨に賛同される方は、よい新名称を考えてあげることも力強いサポートになりそうだ。