太平洋戦争後の極東軍事裁判で判事を務めたインド人ラダ・ビノード・パール氏の発言をまとめた新たなメモが見つかり、死の前年に日本の再軍備・憲法改正に不快感を示していたことがわかった。15日朝刊で日本経済新聞が報道したもの。近々パール氏遺族に参拝する予定を立てている安倍総理の動向に影響を与える可能性もありそうだ。
このメモは側近だったトモ・ヒコ・トミータ氏(2003年に死亡)が、判事が亡くなるまでの発言を書き留めておいたもの。問題になっているのはパール判事が晩年の1960年、当時の岸信介首相による日米安保条約批准や憲法改正に向けた行動について語ったとされる部分。
「私は或る時に、自衛隊が整備され。
そのうえ岸までもが。
だから私はあれ以来反対している。
それが私の心だ」
とあり、ヤクザを動員してまで法案を成立させようとする岸首相や日本の再軍備に、パール氏が強烈な不快感を示しているようすが伺える。
パール判事については極東軍事裁判で「日本側戦犯全員の無罪を主張した」として、発言のおいしいとこだけ都合よく引用されることが多かったため、右翼論壇に衝撃を呼ぶことは必至だ。いっぽう、日経から依頼を受けトミータメモの分析を行った歴史家の秦郁彦氏は
「判事は戦犯の無罪を主張しただけで、日本の戦争犯罪を強く憎む絶対平和主義者だったことは、専門家のあいだでの常識。戦後憲法堅持・再軍備反対の姿勢も当然で、今回のメモは新たな傍証に過ぎない」
と冷静に受け止めている。
報道を受け、官邸筋は「靖国参拝ができず、御用メディアやネット右翼のご機嫌を伺うためにパールさん宅参拝を思いついたが、これでは行った先で逆にペンペンされそうな気がする。どうするか、ない知恵を振り絞ってよく考えたい」としている。