聴いた者に地獄の苦しみをひきおこす「殺人着うた」が、若い携帯電話利用者のあいだで蔓延している。端末の高機能化でCDなみ音質の大容量データをやりとりできるようになったことが、配信者の罪悪感を麻痺させる一因となっているようだ。
「ボエーーー!」
地獄の歌声が携帯から響く。悪名高いサイト「オレのリサイタル・ドット・ジェイピー」が配信している着うただ。不用意に聴くと死ぬ恐れもあるという。
「もちろんこんな歌、ダウンロードしたくなかったけど、逆らうとボコボコにされるから…」
と、横から見るとΣの髪型の被害者(匿名希望)は語る。サイトからは毎日新着データを紹介するメルマガが届き、高度なCRMシステムで「オレサマの歌をちゃんと聴いているか」監視される。
同サイトが配信を始めたのは一年ほど前。小泉政権の建ぺい率規制緩和でリサイタル会場がマンションになってしまったのがきっかけ。会場は失ったもののネットを利用すれば店の手伝いをサボる必要がなく小遣い稼ぎにもなることに気付いた権利者が、急速に事業を拡大してきた。契約は強引で「心の友よ~」などと言葉巧みに騙しての事例がめだつ。
むりやり契約させられた消費者のひとりが耐えかね、猫型ロボットに調停を申し込んだことがあったが、どら焼きで買収されており役に立たなかったという。同サイトは最近では兄妹サイトと提携。電子コミックの配信にまで進出しており、被害はさらに拡大する様相を呈している。
唯一の望みは監督官庁による規制だが、母ちゃんの携帯が着うた非対応の「らくらくホン」なため、密告を理解してもらえない状態だ。出来杉くんによる「auにMNPして高機能な携帯に変えましょう」勧誘作戦が成功するかどうかが、今後の進展のカギとなりそうだ。