文具市場古参のコクヨが、思わぬ新兵の参入に警戒を強めている。新兵、すなわち先ごろ新製品を発表して殴り込みをかけてきたアップルだ。公には「圧倒的なシェアで立ち入るスキはない」と一顧だにしないそぶりを見せるコクヨだが、敵の潜在能力の前に戦々恐々。急きょ迎撃策を練り始めたとの報告もある。
波乱を呼んでいるのはアップルが先週発表したばかりの新製品。発表会の席上、CEOのスティーブ・ジョブス氏は、同社が従来手がけてこなかった
「クリップ」
を取り出し聴衆をあっと言わせた。
「アップルにとって、スカしたデザイナーとヒネくれたアルファブロガーにしか売れないMacに変わる、新しい市場を開拓することは長年の課題だった。文具業界参入は当然の帰結でしょう」
と事情通は語る。
対するコクヨは悠然としたかまえを崩さない。
「クリップ市場は弊社の独擅場。安価・高品質な製品を提供しており、1コ1万円などと暴利をむさぼるアップルの新製品が売れるとは思えない。だいたい、クリップに音楽再生機能がついているというのも余計だ」(同社広報)
との見方だが、先の事情通はこう指摘する。
「リンゴマークさえついていればどんなに高くても、要らない機能がついていても買うのがアップルユーザー。これらの人々の多くは文具に異常に執着する“ライフハック教”の信者でもあるため、文具市場のシェアが急激に塗り替えられる可能性は高い」
弊紙の調べでは、巨人コクヨも水面下では対抗策を準備し始めているようだ。先週末には社内で新型ダブルクリップを企画する特命部署を設置。スリーエム社に提携を呼びかけ、ライフハック信者が大好きなポストイットとのコラボレーション製品
「ポストイット付きダブルクリップ」
の商品化に向け動いているという。年末商戦に向け、クリップ市場から当分目が離せそうにない。弊紙経由でiPodを1万個くらい買って見守る必要がありそうだ。