米国が三人称単数現在動詞の語尾につける“s”の廃止を決定したことが話題を呼んでいるが、同様の動きはもうひとつの大国にも広がっている。ロシア連邦科学文化省は、
「男性名詞の複数形与格格変化を廃止する」
との方針を明らかにした。2018年のロシア語学習指導要領から適用する予定で、その後はさらに
- 複数形対格
- 複数形造格
についても段階的に格変化を廃止する方針だという。
ロシア語については、ただでさえ文字数が33文字と多いのに名詞の格変化が
- 男性
- 女性
- 中性
にかけることの
- 単数
- 複数
に、さらに
- 主格
- 生格
- 与格
- 対格
- 造格
- 前置格
と36通りの組み合わせがあり、初学者が「三単現のs? はぁ? 甘えてんじゃねえよ」とキレる原因にもなっていた。
とりわけ男性複数形与格については、たとえばсловарь(辞書:スラヴァーリ)がсловарям(スラヴァリャーム)になるなどわけがわからないうえ、与格の使い道がそもそも直感的でないことなどから事業仕分けの対象に決まった。ロシアはもともと少数民族が多い連邦国家だという事情から、ロシア語学習の敷居を下げるアファーマティブアクションとしての意味合いもあるという。
同様の言語ゆとり政策は世界各国で広がっており、グルジアが「能格・具格の廃止」政策を議会で審議中のほか、アラブ首長国連邦が「アラビア文字の“語尾形”廃止(語中形と同一化)」を検討している。言語習得の敷居を下げる動きは、もはやとどまるところを知らないグローバルな流れのようだ。日本でも「“ハンバーグランチでよろしかったでしょうか”ってなんだ!」などと逆ギレせず、広い心で毎日を過ごすことが求められていると言えそうだ。